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【宵月暁陽第六十八話『合間』更新】

 合間は本当に合間ですが、休憩を忘れて集中しすぎるとその集中が切れたときにわりと思いっきりキますよね。ドリンク剤によるドーピングに近いものがある。カフェインはお腹に優しくない。

 こんにちは陽雪です。学生である、とは色々な所で隠しもせずに書いているのですが、学期初の授業日、ガイダンスが早々に終わって次の授業まで一時間も空きあるよどうしよう暇だよし図書館いってパソコンで遊ぼうって思って行ってみたらMacが刷新されていて滅茶苦茶驚きました。iMacの薄いやつだ。しかもOS10.9.1だ。DVDドライブが外付けになってる。流石に七輪じゃなかった。
 私が家で使ってるのは確かOS10.7だったかなんですよね。嬉しいは嬉しいのですが正直若干複雑です。新しいノート欲しいなぁ……入れ替えするんなら古い方欲しかったなぁ……。

 そんな訳でそのガイダンスの合間に書いています。更新日に先んじてこちらを書いてしまおうそうすれば更新日当日にパソコンの前で唸る必要がない、という目論見。
 Evernoteの良い所はアプリケーションのない環境でも、こうしてブラウザが使えるのならどこからでもアクセスして編集ができるという所です。

 さて、本題。
 宵月暁陽は第六十八話、『合間』を更新しました。

 以下久々な恒例。



式と魔法のはなし。

 久々なのに恒例と使っていいものか。一瞬疑問も覚えましたがまあ、まあ。
 そんな訳で今回は本篇から少し外れて『式』と『魔法』の話題について。

 本篇だと今から少し遡って、六十話あたりに、「傀儡式」という言葉が出てきたと思います。同時に「傀儡魔法」という言葉も出てきています。
 魔法は知識である、とは、何度も魔法使い達も言っている事。そして前回更新分の六十七話『理論』では魔法の構築についてが工学師によってざらっと説明されています。

 魔法は数字と文字の羅列である、というのが、基本的には一番簡単な表現になります。本当はその羅列されている数字や文字に対応して魔力の操作であったり構築陣の展開であったりがするので、「数字と文字だけで既に魔法である」という表現は偽となりますが。
 この事から、ある特定の魔法の系統は、公式の場では「式」と呼称される事があります。傀儡魔法も、正確にはこの部類。
 魔法学的に言えば、「数字と文字だけで既に魔法である」は正しくありません。それを言うと数学が魔法になってしまうから。では数学のそれと同じように「式」と呼ばれる魔法と、「魔法」と呼ばれる魔法の違いは何なのか。
 有り体に言えば「魔法院が認めているかいないか」です。

 キレナシシャスは大国です。永世中立を宣言してからというもの戦争の経験が殆ど無く、あったとしても宣言以前から大陸随一の魔法の知識を蓄え、形にしていた事から、敗戦の経験はもう殆ど無いに等しいです。国相手にして戦える魔法使いだけで一つの軍が成立するような国なので、中立宣言直後に隣国からのちょっかいがあった程度(キレナシシャスは他国と同盟を結ぶ事ができない為、頑張れば小国でも陥落させる事はできる、という世論が当時ありました。ありまし『た』)。それすらも小さい虫を払うような勢いで追い返してしまい。
 キレナシシャスが元々相当な戦争上手という事もあったのですが、それを支えたのも魔法の知識。故に大陸の殆どの国が加盟するエフェロット軍事同盟(ひとまず喧嘩する時は事前にそう宣言しようね、の約束を軸にした、公平な戦争をしようという同盟)に加盟していないにも関わらず、キレナシシャスはその同盟が設けた魔法水準の遥か上を行く水準を今も尚誇ります。
 つまり大陸の魔法といえばキレナシシャス、というわけです。魔法の首都とも呼ばれる、とは、作中にもある言葉ですが。

 そんなキレナシシャスですから学問としての魔法の宗主も務めています。そのトップが魔法院であり、一般に出版される魔法は、大概の国では、その魔法院の認可を受けたものに限られます。
 その認可には様々な制限があります。その中で一番重要視されるのが、その魔法の『系統』です。攻撃系統なのか、補助系統なのか。構成系統なのか結界系統なのか、あるいは通常系統なのか。
 この系統が、魔法院に認められていないと、「魔法」とは呼ばれません。「式」と呼ばれる魔法群は、院の出版認可が無い魔法であるという事を示します。

 出版認可がなくとも使用認可があれば魔法の使用については制限されませんので、その点は問題ありません。エーフェが外堀も内堀も埋めようとしていたのは「使用認可がまだ降りてない魔法を使おうとしているから」なので、それはそれで大問題なのですが。言葉の通り知られなければ罪ではない。
 ちなみに禁忌魔法は「魔法」で出版認可も降りていますが、一般には出版は許可されていません。数冊限りで本が作られ、限られた場所に厳重に保管されています。これは、禁忌魔法は世界に流布してはならない、という魔法院の信条による対応です。

 ではなぜ「式」には出版認可が降りていないのか。簡単に言えば、その魔法群が万人が扱えるほど成熟したものではないからです。

 傀儡式。これは文字通り傀儡、人形を作り、意のままに操作、支配するものです。ですがこの魔法群には欠点が多く、魔法自身の自我を表出させるといった特徴を持つ為に暴走しやすく、『異種』になる可能性の非常に高い系統とされ、その部分が解消されない限りは認可を受けられないだろうと言われています。
 また、使い方によっては生きている人間、動植物も傀儡として利用できてしまうという点も問題視され、出版認可が降りたとしても禁忌区分だろう、とも言われています。

 「式」にはもう一つの系統があります。「空間式」と呼ばれるもので、これは所謂重力操作であったり瞬間移動であったりを可能にする系統なのですが、この系統は傀儡式以上に若く、成熟のせの字もない、といった現状で、研究者はとんでもない変わり者扱いをされるほどの系統です。
 現在できているのは「重力を無視してちょっと浮けるけど陣から少しでも離れると反動で潰れる」とか「ちょっとした忘れ物はあるけど100mくらいなら瞬間移動できる」とか、その程度。後者の忘れ物とはとどのつまり腕だったり脚だったり脳だったり心臓の事です。
 魔法院としても「そんなものに出版認可出せるか!!」といった所でしょう。そんなの魔法じゃないタチの悪い悪戯だ。

 と、「式」には色々と問題があるわけですが、前述の通り使用そのものには制限はかけられていません。制限すると研究ができないからです。
 また、この呼び分けも公式の場、講演会や論文での約束事であり、会話の中では普通に傀儡魔法、空間魔法と呼ばれることもあります。神経質な人は呼び分けているでしょうが、そこまで気にする必要もないものです。



 少し大回りな説明になってしまった気がします。久々なのにこの量。
 大陸の同盟についてがちらっと出たので、そのうちその辺りの話もやりたいなぁと思いつつ。

 今回はここまで。
 陽雪でした。


   

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