容姿
橙に近い、濃い夕陽の色をした瞳が特徴的で、対して質素で堅実な茶の髪はいつも長い三つ編みに編み込まれていた。藍色の髪紐を混ぜ込んで編まれた髪は、解けば猫の癖っ毛のようにふわふわと曲線を描いて、本人はそれが気に入らなかったらしい。
藍色の制服の上、腰には組紐をさらに編んで作られた帯を巻いて、そこに種々様々な触媒の入る小さな鞄を据えていた。中身は企業秘密、と嘯いていたが、他人には把握しきれないほどのものが入っているという噂がまことしやかに囁かれるほど、事実戦闘に入れば鞄のその小ささにはありえない程のものが出てくることもしばしばあった。
制服は規律の許す限り改変を加えていたが、故に魔法使いらしい魔法使いであったとも言える。
詳細
「戦闘術式を専門とする魔法工学師」の称号である"エフィ"を持つ、紫旗師団第一部隊に所属した魔導師であり工学師であった女性。
師である工学師レヴァンティアの元から推薦を受け直接紫旗に引き抜かれ、以来第一部隊の所属として特に国王ラディスティルの近くに控える侍従役を仰せつかっていた。そのため紫旗本部に居ることも、藍色の制服を身に着けていることも少なく、相反して前線に在る事が多かった。
実力者であり、工学師という事もあって紫旗に所属する魔導師達の魔法具の面倒を見る事も多かったが、本人が一番熱を入れていたのは新種の宝珠の開発であり、そのための研究機関を魔法院から命令された程、工学師の中では知られた存在だったが、実質遺せたものは新種宝珠の設計図だけであり、その完成はたった一つの設計書を彼女の生前に託された弟弟子エィフィエの独り立ちを待つ事となる。
面倒見が良く、『紫銀』が特に懐いていた内の一人。本部に居ることは少なかったが、侍従という仕事柄連絡役になる事が多く、その関係で神殿にも良く出入りしていた。
六二七三年三月二十七日、紫銀の護衛任務中に殉職。享年三十。