容姿
風の翠の髪は日によって括られる位置が変わり、あるいは纏めずにいる日もあり、理由はその日の氣質調整の都合だったらしい。紫旗の制服はしっかりと着込む人だったが、どうにも調整が上手いほうではなく、それにはきちんとした理由があったらしい。本人以外に苦慮する声はなかった。
やんわりとした、しかし弱々しい空気の少しも無い雰囲気を持って、隊の任務内容の関係もあったのか教師に近い立ち居振る舞いをすることが多かった。その知識の広さから色々な場に引き合わされ、様々な致命的な現場に居合わせ、それを生き延びたという歴戦の魔導師らしさ、というのは、微塵も感じられないままだった。
詳細
裏一隊の隊員として、隊の所属を問わず指導・教育を任務としていた団員の一人。裏隊は基本的には前線に立たない、教練中の見習いや子弟が所属する隊が裏一から裏四隊まであり、裏一はその指揮や指導教育を担当する少数の団員が所属する隊。また第一部隊の監査員も務め、その関係で第一部隊の中で要員として活動していた。
コールウェイン士官学校が輩出した白眉。紫旗が抱える「もう一人の天才」。幼年も幼年の頃から魔法に通じ、多様な理論や学派、系統や式の別を問わずに学べるものは全て学び、学んだものを他者に還元する力を十分以上に持ち合わせた人物。士官学校に通って一年目で紫旗の目を引き、卒業年次を待たずに十六の若さで紫旗の引き抜きを受けて入団した異例でもあり、本人の談では「卒業まで待ってもこれ以上伸び代がない」とのことだった。
紫旗副団長ユゼの信頼を受ける一人であり、その評価が故に裏一隊所属となりあちこちの隊に貸し出しされてはありとあらゆる問題や事件と鉢合わせてきた苦労人と知られ、『紫銀』発見当時はそれを労うための本部内勤という名の事実上の休暇にあったが、仮にでも仕事の間は逃げられないらしい、と、笑っていられるような人だった。
六二七三年三月二十七日、紫銀の奪還任務中に殉職。享年三十八。