容姿
白金に近い髪は柔らかい癖を持って、あちこちばらばらな長さに切られながらも肩を超えて背の半ばまで伸ばされている。視界の邪魔にもなりそうなものだが、括ることも纏めることも整えることもしていない。髪よりも濃い金色の瞳は常にまっすぐどこかを見据えているが、眼が合えば圧されるような重さのある視線を持つ。
出自も素性も分からない中で唯一明確であるのは見た目だけだが、その外見においても信用できるのは色だけでしか無い。
外見年齢は二十代半ばだが、魔導師である故に信用には足らない。推測される年齢に対しては小柄だが、存在感が薄いわけでも無い。
長官とはいえ蒼樹協会に所属する魔導師である以上、黒い服の着用が許されているのだが、長官として行動している間に彼が黒服を纏うことはほぼ無い。本来であれば、北の紫樹長官のように長官であろうと黒い服を纏うものなのだが、ヴァルディアの「黒服」は正装や礼装、それに準ずる場でのみしかない。
詳細
蒼樹協会の長官として、魔導師の首位に在る人物。蒼樹が位置する都市の総帥であり、どの貴族の領地でも無い街と周囲の土地を統括する、領主のような立場でもある魔導師。
だが外見、色と名前以外にその素性を保証するものは一切存在せず、明かされていない。魔導師として活動するにあたって後ろ盾には王立図書館の館長であり北の長官の双子の弟であるフィエリアルが立っているが、そうであっても一つの協会の長にというには明らかに保証が足りない。学院に通っていたという経歴を辿ることは可能だが、経歴以外のものは何一つとして見つからない。消されているのではなく、隠されている、というのが、調査に当たった人物達の総評である。
真面目なのか不真面目なのかも判然としないが、おそらく不真面目な部類に入るのだろう、とは周囲の人間にはそう思われている。本人の事をよく知る人間であれば、世話好きの心配性だ、とは言われるが、当人は否定している。
能力は有り余っている為に、実力を加味した評価から前代白冠長官から推薦を受け、魔法院がそれを承認しての黒冠継承という経緯がある。元々蒼樹に所属するとなった時には見るからに子供、という域を出ておらず、その所為もあってか協会で前線活動を行っていたのはたった四年間に限られ、それまでの二年間は訓練と支援任務のみだったらしい。その中でどうして長官に推薦されるに至ったのかは、本人は語ろうとはしない。
現在蒼樹協会の所属者にわかるのはそこまでとなっている。学院の頃を知っているのが数人の友人、それ以前の事を知っているのはクウェリスのみであり、彼らが自分の知るそれを語ろうという様子も無い。
嗜好についても不明確な部分が多いが、好き嫌いははっきりしているらしい。果物が好きらしいということ、それ以外の甘いものは苦手という事は知られており、また内陸の人間には珍しく蛸や烏賊といった異様な形をした海産物に抵抗もなく、食物として認識しているらしい。おそらく学院時代の影響だろう、とは言われているが。