広間のテーブルの上には大量の書き付けと本が開かれたままになっていて、そこに向かい合っているのはレティシャと、万年筆を手にページを捲っているヴァルディアだった。教えているらしい方、本と書き付けを指差しながらのレティシャの方が気付くのは早かった。
「あら、クロウィル。今日の訓練終わったの?」
「うん、一応型はなんとかなってる、かな、また剣変わったけど……」
 言いながら右手に提げた剣を持ち上げる。訓練、鉄の重さに慣れる為の基礎の反復の中で、剣を軽いと感じることが多くなった。扱い方が正しいからそうなのか、それともコウハ故なのか、エディルドは教えてくれない。ただ軽く思うと言えば、新しく訓練用の剣を渡してくれた。持ち上げたそれは、今はすこし片手には重い。訓練用なのに鞘にもちゃんと簡素ながら装飾が、と眺めているうちにヴァルディアの声。
「……剣士なのか。ユゼがああだから、魔法使いかと思っていた」
「ああ、いや、俺は全然使えなくて。父さんのはなんか、なんていうか、規格外っていうか。コウハに魔法使い少ないから」
「そうなのか……コウハの作るアミュレットは質が良い、魔法使いが多いかと思っていたが」
「なんか、女の人たちが精霊と仲良いみたいで、それでって聞いてる。……ヴァルディアさんは、勉強?」
「構築学のね。大体数学のようなものだけれど」
 答えてくれたのはレティシャの方だった。構築学、と聞いて疑念を浮かべればヴァルディアに手招かれて、それで横から書き付けの山を見れば、大量の数式が並んでいた。いや、数式とも言えない、計算記号と文字列が一緒くたに並んでいる。
「……なにこれ……?」
「魔法の構築だな。魔法を見たことは?」
「あんまりない……魔法仕掛けの、時計塔とかは見たことはあるけど」
「魔法は通常、構築陣を展開する」
 言った右手、万年筆が宙に何か図形を描くように動く。遅れてその軌跡に光が集まって、現れたのは手のひらに収まりそうな小さな円陣。
「魔導師の魔法は、こういった構築陣を展開、詠唱で効果を高め発動し、効果を『終了する』」
 最後の句を言い切ると同時に陣の中央に仄火が浮かび上がって思わず身を引いた。陣は既に消えている、黄金の表情には僅か、面白がる色味。括られて居ない金色の髪を透かすようにして、髪よりも濃い黄金の眼がこちらの様子を伺っているのがわかった。
「人に害のある火ではない、問題ない」
「……びっくりした……」
「これは汎用魔法って言われるものね。魔導師でなくても、少し訓練すれば扱えるような小さい魔法。炉や竃、蝋燭に火を灯すのに使うのが一般的ね」
「ああ、そういうのもあるんだ、魔法……」
「……ユゼから聞いていないのか?」
「んーと……父さんとはしばらく会ってなくて、会ったのも数ヶ月前で……」
 なんとなく口籠ってしまう。この人には、『言葉』のことは知られてしまっている。それがそうさせたのかもしれなかった。ヴァルディアの眼は思考を示すように少し逸れて、すぐに戻ってきた。
「歳は?」
「……ヴァルディアさんの個人情報と交換っていうのは?」
「俺は分類的には魔導師だが剣を使う」
 即座に返されて、それで思わず目を白黒させているうちにレティシャの笑う声。そちらを向けば、笑みながら、笑う声を抑えながら解説してくれる。
「どこで習ったのか、魔力で剣を作り出して、って芸当が出来てしまっているのよ。言うなれば魔法剣士、かしら」
「……あれ、でも、剣と魔法を同時にって……」
「禁忌になるのは騎士の場合だけね。魔導師として、あくまで魔法と魔力でってだけだから、禁忌には抵触しないの。反則みたいでしょう?」
 確かに。騎士の禁忌は有名だ、毎年、何人かの騎士が禁忌に触れて、という話を聞く。思っているうちにそれで、と彼の声が追いかけてきた。
「交換条件だ」
「……八です」
「………………」
「……いや、なんか、すみません」
「レティシャ、どうなってるんだ?」
「ちなみにラシエナも八歳……と、これは知っているのよね。クロウィルはちゃんとした紫旗の『子弟』よ、ラシエナは入り浸ってるだけ」
「ああ……リアが前の休みに本邸でなく王都の別邸にとはそういうことか……」
「ええ、そういうこと。ほんとはね、クロウィルを子弟にって言い出したのは団長で、最後まで反対してたのはユゼ副長なのよ」
 内緒話のように声を落とされてのそれに、思わず、本当に想像もしていなかったことを言われて耳を疑った。黄金が、ユゼらしいな、と呟くのも耳に入ってくる。
「……そう、なの……?」
「ええ。村に帰ってきたばっかりなんだから、二、三年は村に居させてやりたい、って言って聞かなくて。驚いたのよ、副長がそんなこと言うの、それまでに無かったんだから」
 ――全然知らなかった、と、眼が右手の剣に落ちる。コウハの一族たちは、良くしてくれている。親族はともかく長老からも折々に手紙が送られてくる。兄や姉も、お前のためにと、小さな置物や丸い銀細工の文鎮なども添えて手紙をくれる。
「……知らなかった……」
「そういうのはね、やっぱり親の方が不安に思うのよ。妹とか、弟のこともね」
「だから紫旗は『子弟』に甘い。……八の子供を入れるか、とは言いたいが」
「あら。推定十歳で学院入ってたのは誰だったかしら」
「……紫旗とは違うだろ」
「学院の方が勉強も訓練もきついのよ、知ってた? 最高で八年間しか居られないんだもの、時間割なんてびっしりだったでしょう、あなたなんて」
「……まあ、確かに……」
 二人の会話は聞こえていても、なんとなく、落ち着かない。断ち切ってしまおうと顔を上げて、それであれ、と勝手に声が漏れた。
「……『小さいの』は?」
「ああ、あっちで文字の練習中だ」
 あっち、とは暖炉の方を示して黄金が言う。絨毯が敷かれた上にまた卓袱台が据えられていて、どうやら教えているエディルドは至極幸せそうな様子だった。自分の子供かのように接している、なら大丈夫だろう。――何かに『大丈夫』だと押し付けて、それでレティシャに目を戻した。
「ちょっとお湯使って着替えてくる、汚れたし汗もかいたし」
「あ、そうね。汗は訓練中もちゃんと拭うのよ、じゃないとすぐに凍ってしまうもの、この季節じゃ」
「うん、ありがと」
 言って、踵を返す。様子がおかしい、そう思われただろうか。自分ではそう思う。様子がおかしい、何かに、急かされながら、それでも押さえつけられているような心地がする。
 洗い流してしまえと、厨房を覗き込んで熱湯を薬缶に分けて貰う。盥も一つ拝借して、その二つを持って自分の部屋に。盥に熱湯をあけて、箪笥の中から手拭いを取り出した。訓練中に汚れてしまった訓練着の上着もズボンも脱いでしまって、新しい着替えを取り出す。ズボンは先に身に着けて、他の着替えは寝台に投げ出しておく。熱湯を入れたそこに手で触れればまだ熱いが、火傷を負うほどではなくなっていた。手早く手拭いを濡らして軽く絞る。本気で絞るとこの布地もぶつりといってしまうから心持ち丁寧に余計な水分を落として、そのまま広げて顔を拭った。
 訓練中には夢中で気付かなかったが、あちこちがベタベタするのは普通に不快だからと、適度に手拭いを湯で絞り直しながら全身を拭ってしまう。本当は風呂が一番だが、団員たちが優先だ。子供は風呂場に余裕があるときか、湯を抜いてしまう寸前に駆け込む程度が精一杯。
 それでも全身を丁寧に拭えば随分とさっぱりする。寒いからと普段着のそれをいつも通りに身につけ直して、盥の中の随分とぬるくなってしまった湯は外に捨ててくる。厨房に戻ってしっかりと洗って干して、手拭いの方も一緒に洗って部屋に戻る。あまり出番のない机と備え付けの木の椅子、その背もたれに手拭いを皺にならないように掛けて寝台に腰掛けた。不意に右手に硬いものが触れて、あ、と思う。
 剣帯は、訓練が終わったところで外してしまっている。持ち上げて膝の上に横倒しに置く。鉄剣、まだ刃の潰されたままの訓練用の剣。重さは、騎士たちの扱う長剣と呼ばれるものよりは少し軽いものらしい。
 鍔に掛けて結んだ組紐を解く。左手で柄を握って引き出せば鈍い色。そういえば、数週間しか居なかった村の中で、こんなに鈍い色をしたものはなかった。王都に店を持つ叔父の鍛える剣も槍も鏃もそうだ。もっと、白銀に近い色をしていたはずだ。
 ――陽が登れば起き出して、村の中心にある広場の焚き火に長老が火を入れる。そこから各々の家に分けた火を灯して、女は宝石を研磨し男は剣を鍛える。或いは焚き火の周りに集まって機織りし刺繍し、それらを工芸品に仕上げ、そうでなければ家に持ち帰り衣裳に仕立てる。時に絨毯を織る時などは、焚き火に近い庇の下に特別な機織り機を据えて数人がかりで一つを仕上げる。
 それを、見ているだけだった。見覚えのない兄の工房を覗くのも、見覚えのない姉の手がどうしてあれほど輝く髪飾りを作れるのか伺うのも、父の書斎に近付くのも、何もかもが憚れた。
 郷愁、だろうか。ぽつりと浮かんだそれには否を返した。それを感じ取れるほどではない、自分はあの村では異質だった。留まって暮らすことに圧迫されていた。王都に来るか、紫旗の子弟としてと、そう父に言われた時に安堵したほどだったのだから。
「……眠い、な」
 きっと逃避だ。それでも言葉にしてしまえば本当に睡魔がすり寄って来る。剣を落ちないように小さなローテーブルに据えてそれからそのまま寝台に転がった。毛布は身体の下だが、特別に寒くはない。
 そのまま目を閉じた。うとうとしながら、考えたくないなぁ、そう脳裏に呟いたのが最後だった。



 不意に、あったかい、と思って目が覚めた。
 覚めたというより、気付いたら目が開いていた。いつのまにか毛布の重なりが身体の上にある。だからかとぼんやりとした意識で思って、それからこの毛布の下にもう一人がいると気付いた。
 銀の長い髪は、邪魔だったのだろうか、三つ編みに編まれて長くのたうっている。完全に毛布が被さって、小さい身体はまるで引きつけられたかのように腕も脚も織り込んで、膝をついて祈るように更に小さく丸まっていた。
 寒いのかな。思って、自分でも暖かいと思う腕を伸ばして銀色を撫でる。抱えてしまえそうだと気付けば、その背中に腕を伸ばして抱え込んだ。少し身動いだ子供は、だが抜け出そうとはしていない。とろとろと流れる時間の中で、落ちる瞼を押し上げ、その力が抜けて落ちを何度か繰り返しているうちに、抱えた子供の身体がようやく暖かく感じた。
 一人で眠れば凍えてしまうのかもしれない。眠っている間は、人間の身体は暖かく変わるはずでも、元々体温の低い人はそうとも限らないともいう。母もこの王都にいるのだから、少し薬でも融通してやろうか。生薬や薬草の類なら、味はともかく、こうして身体をきつく丸めなければならないほど冷えてしまう事も無いだろうから。
 子供の眠る息遣いは一定していて、穏やかだった。夢は見ているのだろうか、それとももっと深く眠っているのだろうか。後者なら良いと思う。夢は見ないほうがいい。



「クロウィル」
 声が聞こえて、それで一気に覚醒した。寝てた、と当然のことに今更慌てて顔を上げれば、見えたのは腰に手を当ててこちらの顔を覗き込んでいる金茶だった。
「……お、おはよう……」
「もう夜よ。もう、『小さいの』に起こしてきてってお願いしたのに、一緒に寝てるし」
「ご、ごめん、一回起きて気付いたんだけど二度寝した……」
 手が近づいてきて、ぱつん、と軽い音を立てて額を指で叩かれる。声が漏れそうになるのはなんとか抑え込んで、それから見上げれば苦笑。さらにレティシャの金の眼が向いた先を見れば、毛布の下敷きに銀色が見えた。
「疲れてるだろうから、って、団長が勝手に休みにしてくれたわ、ラシエナに感謝するのよ」
「う、うん……」
 あの幼馴染なら仕方ないんだから、と言う程度で許してくれるだろうが、今までにこんなことがなかったから内心は焦っていた。こう言う時どうすればいいのかわからない。ぽん、と頭を撫でてくれる手の感触には驚いて見上げれば、掛布をそっと除ける手付きと共に声が向けられた。
「髪結んだまま寝たら駄目よ、傷んでしまったらことだもの」
「う、うん、わかった……」
「うん。さあ、『小さいの』、起きて」
 小さい肩を揺する手の方を見れば、変わらず身体を丸めて縮めてしまっているようだった。誰かが抱いている時にうとうととしている時は、そんなことはないのだが。視線に気付いてか、レティシャは一旦手を止めて口を開いた。
「独り寝すると冷えてしまうみたいなの、だからいつも誰かしらが抱えて眠らせてあげるのだけれどね」
「そう、なんだ……」
「一応、部屋も用意はしてあるのだけれどね、本部が落ち着くみたいだから。……仕方ないわね」
 言った彼女の両手が『小さいの』を上向きに転がして抱き上げる。まるで小さい赤ん坊にするように両腕に抱いて、それでようやく小さく呻くような声が聞こえた。自分も掛布から身体を抜いて靴に足を突っ込んで、掛布を整えている間にレティシャの声が聞こえていた。
「お使いはできたのに、そんなに眠かったのかしら。誰かが寝てるところに潜り込むなんて初めてじゃないかしら?」
「え?」
「何かを持ってきて、とか、取ってきて、は通じるようになったのよ、なんとかね。『起こして』ってことがわからなかったのかしら、でもこの部屋にはちゃんと来れたのよね」
 言葉の後半になって、金の眼が虚空を見上げれば微かに是を返す声。やっぱり誰か見てたよな、とはさらに気不味く思いながら、起こしてくれればいいのに、と小さく文句を言う。指先で小突いてきた手の持ち主を見上げれば、彼女はからかうように笑っていた。
「ちゃんと髪を整えてからいらっしゃいな。もう夕食よ」
「え、そんなに」
「だから起こしにきたのよ。剣もちゃんと持ってくるのよ」
「……わかった」
 やっぱり時計は早急に母さんに融通してもらうか、フィズヴァかフィズカに頼んでおこう。窓の外は既に暗いが、暗いとしか見分けがつかない。まだ支部にいるだろうかと思いながら、広間にね、という彼女の声にすぐに声を返して、身体は机の方へと向けていた。小さい箱を開いて櫛を取り出す。言われた通り、結んでいたままの髪は変に髪紐が絡みついてしまっているようだった。仕方ないと鏡も出して、なんとか髪が抜けたり切れたりしないように苦心して絡まったのを解いていく。随分とそれに時間を取られて、全部解けたと見た時には大きく溜息をついた。
 寝坊なんかしたことなかったのになあ、と内心呟く。寝坊どころかさっきまでのはサボりと同等だろう。髪をまとめて肩から前へと持ってきて、毛先から順に丁寧に梳いていく。成年するまでは伸ばすようにと言われているが、仕事に邪魔になる分は切ってきてしまっているから、八の子供にしても短い方だ。ラシエナのように、腰を超えても伸ばし続けるのが正しい姿なのだが。思いながらも全体に櫛を通し終えて朱色の髪紐で一つに括って、端に――と、思って、気付いた。
「あれ、石……」
 いつもこの髪紐の先につないでいる飾り玉が無い。とりあえず紐はずれたり緩んだりしないようにきつく縛って、それから寝台の掛布をめくって枕の下を見てみてもどこにも無い。小さな部屋だ、全ての場所を探し終えても見つからないのには首をかしげた。
 訓練中に落として気付かなかったのか。なら明日の朝か、空き時間にでも訓練場を探せば見つかるだろう。思いながらテーブルの上の鉄剣を持ち上げて、鞘と柄を繋げた組紐が緩んでいないのを心持ち慎重に確認してからそれを左手に持って廊下に出る。そういえばいつものコートは広間に置いてきたままか、と思い出して早足に廊下を進んでいく、その途中に上から声が降ってきた。
「おい、クロウィル」
「っ、と、え、団長?」
「ようねぼすけ」
「う、ご、ごめん……」
「訓練続きだったしな、ここらで一息入れたほうがいいさ」
 言いながら階段を軽快に駆け下りてくる。肩を叩かれて促されるままに並んで広間へと足を向けた。
「『小さいの』には、お前を起こしてきてくれって頼んだんだがな」
「なんか……気付いたら横で寝てた……んで二度寝した、ごめん」
「らしいな、ディストが、……まあ、そうらしいって伝えてくれた。『寝てるのを起こす』ってのはまだわからんらしい」
 一瞬言葉に詰まったようなそれには疑問符が浮かんで、言い濁すのにはさらに疑念が湧く。それからすぐに紫の眼がこちらを向いて、何かと思えば左手の剣を見ているようだった。
「……そうか、お前左利きか」
「うん」
「……右も使えるようにならんとだな。儀礼は全部左右で役割あるからな」
「そう、なんだ?」
「規律正しく、って意味も当然あるんだがな。右の手は剣を持つ手、左の手は魔法を持つ手、って考え方がある。上官とか主君に左の手を貰うのは騎士にとっては誉れだな」
 魔法を持つ手、と繰り返しながら左手を持ち上げる。思い返してみれば、訓練場で魔法を繰る魔導師たちの杖や腕輪は左が多かったような、と、ぼんやり思い返しているうちに扉が見えた。
「だから左利きには魔法使いが多いんだがな。お前はやっぱ剣のが馴染むだろ」
「うん。……コウハだからかかな」
「かもな。鉄鋼にも宝石にも繋がってる種族だ、色々あるだろうがやっぱ土の力が大きいな」
 言う団長の手が広間の扉を開ける。途端に賑やかな声と音が聞こえて何事かと足踏みしているうちに横の団長が声を上げていた。
「なにしてんだ?」
「あ、団長、クロも! 見て!!」
 幼馴染の声。見て、という喜色も明らかな声と共に示されたのは暖炉の前の絨毯で、なんだと思いながら言われた通りに目を向ければ、毛糸で編まれたフード付きの肩掛けを指先で握っている様子の『小さいの』で、頭に被せられたフードからは、長い『耳』が垂れていた。気付いた紫がこちらを見つけて、軽い音を立てて駆け寄って来る。手を伸ばしてぼす、と音を立てて片足にしがみついて来る。見上げて来るそれにつれて、白い、内側はやわらかい桃色で編まれたその耳がぱたりと背の側に垂れていった。
「レティシャが作ってくれたの、うさぎの!! かわいい!!」
「――ッ!!」
 幼馴染の嬉しそうな声には空いていた右手で顔を覆った。――どうしろと。




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