渡の坂の先にある扉を潜って来たとき、紫青は目を瞑っていて、もう開けて見て構いませんという神官の声で紫を見せた。周囲を見渡そうとした眼がすぐにこちらに気付いて駆けて来るのを両手で迎える。
「ちゃんとできたか?」
「できた、……と、おもう……」
 腕に抱えあげながらのそれには、紫青は背後を見ながら付け足す。神殿の中は灯りがいくつも灯っていて明るく、その下でこちらに足を向けていた神官の口元が笑みを浮かべるのが見えた。目元には紗の布が垂れていて、こちらからは瞳の色もわからない。
「はい、確かに。障りも無く越えて頂けましたから、何も言うこともございません」
「……だいじょうぶ……?」
「はい、大丈夫です」
 紫青はそれでようやく息がつけたようだった。人見知りする中で知らない人と二人きりという初めての状況だったのだ、この短時間でも大変な思いをしただろう。思って、あれ、と顔を上げて神官を見れば、察してなのか口元に指が当てられる。少しの距離が詰められて小声。
「他の者の耳があります、お気を付けて。知っているのは私と渡司長のみです、ここは声がよく通る。……今は祭祀も一人しか居りませんから、渡りの役を負えることは幸運でした」
 先んじて言われ、笑んでの言葉の合間に口元に当てられていた指が一瞬だけ空間の奥を指し示してすぐに袖の中に隠れて降ろされる。示された方、横目を向ければ数人の白衣と、似たような格好だがフードの無い数人。合わせて十人もいないだろうか。
「席をご用意してございます。次第に他の色の方々もお出でになりますので、開会まで楽にしてお待ちください」
 一歩退いて言う彼が手で示した方に目を向ければ、数段上がっての位置にはあの時見た紗の幕。扉と、その左右に置かれていたはずの壇は隠されていて見えなくなっている。代わりに教壇のように上がった広い床の中央に、なにやら器のようなものを載せた、装飾の施された背の高いテーブル。視線を左、段の下へと向ければ椅子が縦に四列、横に三列に寸分の狂いなくきっちりと置かれている。こんなに広かったのかと神官の背を追いかけようと足を向けつつさらに見渡せば、動き始めた方向とは逆の側に長い広すぎる空間が広がっていてぎょっとした。前の方からは小さく笑う声。
「普段は中扉を設けますから、前にいらした時よりも広く感じられるかと」
「そ、そうなんだ……」
 神殿ってこんなに大きいものなのか。いや外観は確かに大きかったが、その外見の全てがこの一つの空間に当てられているとは思わなかった。なんだかすごいところなのではないか。思いつつ神官の彼の後についていけば、示されたのは最前列の左端、三つ並べられた背付きの品の良い椅子。
 ん、と眉根を寄せた。もう一度開けた方を見やる。前列とは変わって木の横長いベンチが、中央に通路を残して左右に一列ずつ。前から声。
「クロ、どした?」
「……いや、そういえば内容全く聞いてないなって」
「え、白の子でしょ?」
「え」
「え?」
 ――経験則だが、色の名前を冠したもの、というのは『普通のもの』ではない。役目らしきものであれば尚更で、今聞こえた色は、今自分たちが見にまとっている衣装のそれで、確か金色、つまりは禁色の直下にある光の第二位の色ではなかったか。
「……え、あれ」
「ごめんラシエナ、俺帰って来たの半年前はそうなんだけど、その「帰って来た」の中身、三ヶ月くらいは帰り道に費やした分だから、この国自体に戻って来たの九月で、王都に来たの十月末なんだわ……」
「え、……あっ、え、あ、そっか秋のお祭りの時いなかった……!?」
「うん、俺今お前の記憶力を全力で疑いたい」
「だ、だって言わないから……!!」
「いや、どこかで補足か何かあるかなと思ってそのままにしてたのは俺だから、そこはごめんだけど、白の子って何……?」
「え、えっと、」
「色の子は、新年の最初に色の力を受け取る役目です」
 神官の彼が言ってくれたそれにはやっぱり役目の名かと目を泳がせた。なんとなくでも神殿の、それらしいものからは距離を置きたい気持ちはあったのだが。彼に、ひとまず先にと再び示されて、せめてもの抵抗としてより中央に近い一つにラシエナを座らせて真ん中にフェルリナードを据える。紫青を端にしなかったのは両隣が埋まっていた方が良いだろうという配慮であって、決して自分がより遠のいていたいわけではない。決して。
「祭祀の神官が、陽を待つ間に祀り台から水を汲みます。神像に頂いて十二回。そのあと色の水に花冠を沈めてから頭上に戴く。色の子としての行為はそれだけです。祭祀の者が来ましたら、順に花冠を渡して頂ければそれだけで結構です。先のことも後のことも神官が行いますので、陽が出るまでは眠らず、行事が始まってから……鐘が鳴り終えてから、ですね、そこから歌と唄が終わるまでは極力言葉を発しなさいませんよう。こちらは必ず守って頂けますよう、万が一がございますから」
「万が一?」
「魂が召し上げられないように、という意味ですね。エフェレツィス様は、ああして頂けましたから本当は少し違うのですが、今回は兄上と同じように。声だけでなく、眠ってしまうのもいけません。お気を付けください」
「うん」
 神官が紫青に言い含めるようにしている間に、魂がと聞いて浮かびそうになった苦い顔を無心で無表情で塗りつぶす。そういえば時間がわからないな、と全く違うことに意識を向けて誤魔化していると、不意に扉の開く音が響いて、何人もの足音がこの広い空間に谺する。四列の端は中央に向けて少し傾いた形に並んでいて、入り口から見れば一番奥のここは周囲がそちらの方向に目を向けやすい、それに甘んじて顔を向ければ、自分たちと同じか、あるいは少し上くらいの子供達だった。では後ほど、と言った神官がそちらに足を向けて、残された幼馴染と顔を見合わせる。
「……これ待ってれば良いんだよな……?」
「だ、だと思う」
「思っ、……え、エナも初めてなのかこれ」
「ご、五歳のときにいっかい……」
 ダメなやつだ。今までの人生で最大の波乱があった五歳の時のことは自分ですら曖昧だ、ラシエナもたぶん、そうだろう。この様子からするに。姿勢が身を乗り出すようにして入り口の方を覗き込んですぐに戻って来るのには自然にだろう、色違いの手が伸びて支えるように背に添えられる。そうしながらも小声。
「ご、ごめん、なんかクロしっかりしてるから色々もう知ってると思ってて、ならいっかって私も」
「そこは気にしろよ……!?」
「えっと、あれ、か、過信? 過信してた」
「お……おう」
 なら仕方ないかと一瞬浮かんだが何が理由で過信に至ったのか。いや問い詰めるべきではないかとその疑問は脇に捨てて、そうこうしている間に他の子供たちが何かを言い合いつつ椅子に着いていた。皆それぞれ属性の象徴色を基調とした衣装だが、自分が着ているそれとはまた形が違う。入って来たのは黄と赤、緑、蒼がそれぞれ一人か二人。そういえば最前列の椅子の数はそれぞれ三つずつなのに、後ろの三列、おそらく八色が並ぶのだろうそこには五つずつ椅子が、となんとなく眺めている間に不意に一人と視線が鉢合わせた。
 鉢合わせた瞬間に相手のそれがじっとりしたものに変わって、やってしまったかと思いつつ見返す。下手に反らすと後がこじれる。決して喧嘩を売るではないので敵意やそれに類するものは全て排除して、そうして見合って少しもしない間に右隣から声。
「クロ」
「ん。どうした?」
 フェルリナードの声に気付いた仕草で強引に目を外す。椅子に座ってしまうと目の高さが全く変わってしまって、見上げる姿勢が少しつらそうな。思う間も声はなく、ややあってから手が伸びて来た。
「め」
「目?」
 なんだろう。思いつつフェルリナードの右手がこちらの顔に向かって伸ばされているのを見て背を屈めれば、届いた指先が目元を掠るように、なんども何かを振り払うような仕草を繰り返す。肌に触れるでもないそれが一旦止んだかと思えば、虚空を掴むようにして握った手が離れて降りていく。紫青はそのまま、握った手元に目を落としていた。
「……フェル、どうかした?」
 ラシエナがその手元を覗き込んで問いかけるのには一度彼女を見上げて、眼はすぐに元の位置に据えられる。何か見えるらしい、精霊か『隣人』だろうからあまり気にしなくて良いか、と背を直して見守りの体制に変える。しばらく進展、動きがないまま文字通り見ているだけの時間が過ぎて、そのうち左手側の壁際の方でフードの無い方の白衣が三人ほどこちらを見て何かを言い交わして、二人がどこかにか足早に駆けていく。また扉の開く音と足音、人の声が入り口の方から聞こえて来るのを背景に聞いているうちに、こちらの視線に気付いた残りの一人がわずかに肩をはね上げたように見えた。もしかして何かしてしまったか、と浮かぶもその彼はすぐに目をそらしてしまって、そして誰かにこちらを示しているようだった。視線の先を追えば神官の一人。案内してくれた彼とは刺繍が違うような、と平穏に思っているうちに、髪を晒した白衣の一人が手がこちらを示し、フードがある方の白衣がこちらに足を向けるのが見えて今度はこちらが身構えた。
 白衣のその人は、しかし自分の前ではなく、いまだにずっと手元を見つめている紫青の前で膝をついて腰を落とす。
「……ああ、めんどくさい奴ですね」
 唐突に距離を詰めたその人は唐突にそう言って、それから無造作に手を伸ばして、どうやら紫見つめている先の虚空を、紫青と同じように握りしめた。唐突だらけの中で紫が神官を見やる。返されたのは声。
「強く握りなさい。思いっきり。……そう」
 言われるそれにフェルリナードは素直に頷いて、だが手の方は少しも動かない。数秒あって、また唐突な声。
「はい、今吐き出しましたね。これが見えたら捨てて宜しい」
「すてる。……どこに?」
「適当な方で構いません。とりあえずあっちに放っておきますか」
 あっち、と言いつつ何かを握ったままの形の手を持ち上げて、近い壁の方にその何かを放り投げる動作。その方向にまだ居た先ほどの彼が、今度は明確に全身を跳ねて放り投げられた『何か』から距離を取ろうとしたのか数歩後退る。それには何も言わずに、そうすると、と男の声が続く。
「今のように捨て台詞を吐きつつ退散します。色を吐いてぐったりするまで握り続けること。良いですね」
「うん」
「ただ巻きついていたりしているだけなら手で払うだけで良い。やり過ぎは禁物です。やり返されますから」
「ぐったりする、まで。……なにか、しゃべっていられる、まで?」
「それで良いです。二人は、この子の親類ですか、それとも友人?」
「い、一応血は繋がってないけど兄、です」
 流れるような、さも当然と言わんばかりの会話の後にやはり唐突に声を向けられて、とっさに何とか取り繕って答える。ラシエナが幼馴染で、と自分とこちらを示しながら言うのを待ってか、フードの頭はこちらを向いた。
「色々と見えすぎる妹のようです、何かと見合って動かない時は急なことが無い限り絶対に視界を遮らないこと。見合っている相手によっては大変なことになります。傷がないのに痛がる場合はすぐに神殿に運んで神官に看てもらうように。頭痛や目の痛みのあるときは特に。臓腑やら何やらの病でなく『隣人』が悪さをしていることもありますから」
「は、はい」
「君自身が今は『隣人』を取り込みやすくなっています、ひと月ほどの間は七日に一度神殿に出向くこと。可能ならここに来なさい、誰かしらが必ずいるのはここだけですから」
「わかりました……」
 言っている指示の内容はわかる、だがその意図や理由は全くわからないまま、頷く。膝を突いたままの彼が白衣の中から時計を取り出して、数字の盤に目を落としたようだった。垣間見えた時間は二十三時二十分、だろうか。
「まだしばらくありますね。五分前になれば予告の鈴を鳴らします、それを合図に席に戻っていれば他のことは構いません、声を殺すのも始まった後のことですから」
「はい」
 物言いは丁寧だが淡々としたような、何かなげやりなような声音だと思う。それでもその人が立ち上がる寸前、青銀の額に指先を当てての小さい声は、全く別な音に聞こえた。
「――また後に」
 こちらが何か声を零すより速く、彼は立ち上がって背を向け行ってしまう。背後からのざわざわとした柔らかな喧騒が耳に戻ってくる。それを聞きながら見送った眼を妹に戻せば、紫はこちらを見上げていた。
「……な、なにがいた……?」
「へんなの。……これくらいで、ぶくぶくしてて、紫がこいの、と、はい色がこいのと、赤いの? が、ぶつぶつまざってて、はやくしゃべるの」
 これくらい、とは両手を開いて空中に丸い空間を区切る。人一人の頭くらいありそうな、とそれを見ながら続いた説明にはあれ、と思う。そういえば先の彼の言葉の中、むしろ最初になにか引っかかるものがあったような。
「わるいことしようとしてた。のっとる? て。……いたくはない?」
「平気、ありがとなフェル」
 ――あまりよく知りたくないが何かが発生しかけていたのは事実なようだったので口早に言って頭を撫でて返す。たぶん、良かった、と思って差し支えないようなことだったろう。あんまり詳しいことは知りたくないが。
 見えすぎる、と神官も言っていたし、自分も気をつけないとな、と、目元を緩めて自分の袖を引っ張ってて遊びを始める妹の様子をみつつ、意識して脳裏に刻む。そういえばなにか、遊べるような玩具もいくつか用意しないとな。勉強に対して嫌がるような様子は今のところないが、かと言って余暇を潰せるものが無いではつまらないだろう。あまり運動をさせるのも良く無いから、パズルのような頭を使うものの方が良いかもしれない。
「フェル」
「ん」
「フィエル様に、色のこと習ったか?」
「色、は、ディアせんせいの十二こと、十二このつぎの十二この、二十四こはおぼえた。じしょの色のみほん、の、してる。あと、まほう? の色のしてる」
「魔法の色……って、属性かな。火とか氷?」
「うん。からだの中にある、から、わかるようにって、練習? してる」
「ほっといたらまた痛くなるって言ってたもんね、フィエル様」
「うん」
 ではどうやら色と属性諸々のことは心配なさそうか。それなら単純に木組みのものなり、色合わせ以外のものの方が良さそうだ、療師は新年早々の仕事が落ち着き次第こちらにまた来てくれるというから、その時に相談するでも、母を巻き込むでもいいかもしれない。袖の模様に眼を留めた紫青にラシエナが刺繍の読み方を教えているのには、これは女性に任せた方がいいだろうなと何人かの顔を思い浮かべる。時間が許すならやはりレティシャが第一候補だろうか、刺繍だけでなく編み物等々も教えてくれそうである。隣二人の様子に、フェルリナードの緊張も解けているようだし平和だな、などと思いながら眺めに徹する。無口でいれば、不意に入り口の方がにわかに騒がしくなったように感じて自然と眼がそちらに向いた。入って来たのは大人子供が大勢で、その中にも一色を身に纏った子供がちらほらと見えた。それなりに経ったように感じるし大量の椅子も並べられているし、恐らく参列者の入場が本格的に始まったのだろう。なんとなくその賑やかな方を見ていればどこか見覚えのある桃色がいたような気がして、一度目を瞬かせて、気づかれる前にと眼を逸らしてフェルリナードとラシエナの二人を眺める作業に戻る。戻っても、少しもしないうちに誰かが殿下と呼ぶ声がして、その二人が顔を上げた。やっぱりか、と諦観を浮かせつつ二人の視線を追いかけるようにして眼を向け直せば、紫のローブを揺らした水桃が薄い蒼の瞳を輝かせながら駆けてくるところだった。
「エフェレツィス!」
「スィナさま」
 呼びかけられた妹が椅子の上から両腕を伸ばして応える。王女は一直線に紫青に駆け寄り飛びつくようにして抱きしめて抱き上げた。
「何日かぶりね、エフェレツィス。元気だったかしら?」
「うん。なし、おいしかった」
「良かったわ。私だけじゃ多すぎたのだけど、気に入ってくれたならまた届けるわね。ラシエナとクロウィルも、花の時以来ね、ごきげんよう。座ったままで大丈夫よ」
「今年最後のご挨拶申し上げます、王女殿下。……それとあの、少し」
「あら」
 落ちそうに、と言いかければすぐに気付いてくれた。フェルリナードが腕の上に座って収まるように抱え直してくれるのにはほっとする。座ったままでと言われても浮かしかけていた腰を落ち着かせて見上げれば、フェルリナードも手を伸ばして王女の首元に抱きついていた。――本当にいつの間にこんなに懐かせていたのだろうかこの人は。
「三人とも新年の色の子をって聞いて、びっくりしたわ。私も今年で最後のお役目だから張り切って来たのだけれど、望外の喜びね」
「さいご?」
「ええ。この冬雪で十七になるの。色の子は未成年しかできないから、次の冬雪で十八になる私は駄目なのよ」
「スィナさまは、なんかいめ?」
「毎年やらせてもらっているから、十二回目ね。エフェレツィスは来年もやりたいかしら?」
「……わからない」
「ふふ、それもそうね」
 背中の方から大量の視線がこちらを向いているのを感じつつ、そりゃこの人が手を落とすわけないだろうなぁと二人のやりとりを見る。ラシエナを巻き込んでの雑談に時折引っ張り出されつつのそれに、これは絶対新年の頭から噂になる、そしてこの王女はそれを狙っている、と確信した。政敵の位置に『エフェレツィス』が据えられてしまうのを避ける効果もあるだろう、自分やラシエナは立場上政治と無縁ではいられない。だから王女――王権に最も遠い貴人の庇護はありがたい以外にはないのだが、やはり自分が注目から逃げるのも難しいようだった。
 慣れよう。そう思って会話を聞きつつ参加しつつを少しの間繰り返して、そうしている間に唐突に鈴の音が響いた。広い空間の中に何重にも鳴り響いて波のように聞こえるその中で、王女が、じゃあ、とフェルリナードを椅子に戻して据えてくれる。
「また後でね、エフェレツィス。二人も」
「はい」
 最後に青銀を撫でて、それで王女は最前列、紫の三人の中の一つに戻る。ざわざわと喧騒に満ちていた神殿の中も、次第に声や衣擦れの音もすっかり治って、少しのうちの鈴の音だけが響くようになる。妹に袖を引かれて眼を向ければ、どうやらこの空気に不安を抱いたのか、人の多いその方に顔を向けすぐに見上げてくる。頭を撫で、背をかがめて小声を零す。
「大丈夫。手握ってよう、静かにな」
 唇に小指を当てて見せればすぐに頷いて返してくれる。袖を握る手は右手で握り返して、それから視線を前、数段高くなっているそこに向ける。テーブルの上に乗っているあれは、そういえばなんなのだろうと疑問が浮いた頃に反響に反響を重ねた音が唐突にふつりと途絶える。そこから数秒もしないうちに、それが聞こえた。




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